柏秀樹の賢く早く上達するバイクライディング

第5回 ワインディング、きほんの「き」

ワインディング

天気の良い日のワインディングは実に気持ちが良いものです。しかし、ついつい楽しくなって走行ペースが上がりやすいのが現実ですね。速く走るだけがバイクライディングではありません。速い人だから上手いと思いがちですが、それは「慣れ」「度胸」「速いバイク」によることが多いのです。

ともかく、他人の走行ペースにつられて、「ハッと思った時はもう遅かった」と言うことがないようにくれぐれも自分のペースを守って走りたいものです。後ろから速いライダーやクルマがきたら無理せず、安全な場所とタイミングで先へ行かせましょう。決して無理しないことです。

では、自分のペースとは何でしょうか。無理していないのに事故を起こすことが多いからこそ、次のことをよく考えて実践していただきたいのです。常に脈と呼吸を意識し、呼吸が浅くなったら危険領域。意識的にゆったりした呼吸を維持することが自分の余裕の目安になります。

緊張を未然に防ぐ方法としては、あえて大きく息を吸って、呼吸を止め(保息)、肩、腕、ヒジ、手に力を入れます。そして上体を脱力しながらゆっくりと息を吐いて吐ききります(止息)。この保息と止息の間を禅の世界で「調息」と言います。そうです。走りながら調息するのです。こうすることで高い集中力が得られるのです。

高い集中力というと緊張しているイメージですが、むしろ真のリラックスこそがライディングに不可欠なことなのです。つまり、リラックスと集中力が同義語なのです。意識的に調息をとることこそ、脳が正常に働く基本となるのです。緊張したまま走ると眼が開いていても見えていないし、記憶しない、つまり学習にならないのです。ライディングは常に進化してこそ真のライディングなのですから、学習抜きにライディングはあり得ないともいえます。常に「安全率」と「楽しさ度」を高めていくような高い意識を持ち続けるには調息が外せないのです。

調息のないコーナリングは単純に根性だけで飛ばし過ぎですし、さまざまな情報はスポイルされ、さまざまなノウハウは蓄積されていきません。本当に上手くなりたければ、調息しながら落ち着いて走るべきなのです。飛ばすほど、根性と度胸で頑張るほど上手くなる、と思いがちですが実は大間違い。テーマを決めてゆっくり正確に走るのが、もっとも賢い成長方法なのです。

もうひとつの走行ルールを自分に課すことも安全と進化のためにオススメです。それはC・K・M(センター・キープ・メソッドの略)ですが、自分の車線の中央だけを狙って走るのです。速く走るだけならC・K・Mは適していません。直線部分を多くとってアウト・イン・アウト※1でセンターラインやガードレールギリギリまでを使えば確かに速いのです。しかし、速いだけで、これでは真の上達や安全と楽しさアップにはつながらないことが多いのです。

対向車がセンターラインを割ってくることはとても多いですし、ガードレールに接近するほどの走行ペースではすでに大半はオーバーペースになっているのです。そうした自分を抑制する方法がC・K・Mです。この方法はちゃんと繊細なブレーキ操作、的確なステアリング操作、バランス補正、適切なシフトワークなど、さまざまな要素がきちんとできていないとC・K・Mを遵守できないのです。C・K・Mの遵守こそは安全が手に入り、尚且つ効果的な技術の向上につながるのです。

知らず知らずにうちにイン側に寄っている時はオーバーペースで、すでに怖くなっている証拠。コーナー出口で外に膨らんでガードレールに異常接近したり、センターラインを割ってしまう時も同じです。そういった成り行き任せの走行ラインをいくら走っても、それは何も上達しないのです。

地味でもしっかりとC・K・Mを遵守し、その中できちんとメリハリをつけながら、さまざまなライディングフォームや滑らかなシフトワークなどの課題に取り組んだ方がはるかに安全で、しかも学習効果が高く、その上に無理な飛ばし方をしなくても自分自身とバイクとお話ができて楽しくなるのです。C・K・Mと調息(禅の世界でゆっくりと息を吐くことを意味します。最も高い集中力=脳の活性化に繋がる重要な心・体のコントロールです)をセットで、これからはゆったりとサイエンスしながらワインディングを楽しんでいただきたいのです。これこそ実は、賢く早く上達するキモなのです。
すべてのスポーツに共通するとても大切なことなのです。

柏木さん

柏さんからの
ワンポイントアドバイス

休日の観光地ではカーブの先で、道の真ん中にクルマを止めて記念写真を撮っていることがよくあります。また、ワインディングはサーキットではありません。カーブの先で何があるかわからないところですから、速度控えめがベスト。カーブミラーがあるところでは、カーブミラーをちゃんと見る余裕があるかないかをセルフチェックします。
ちなみに私は見通しの悪い山道などのワインディングでは、前後ブレーキにリーチをかけていつでも危険に対処できるようにして走っています。常に一歩先には何があるかわからないのです。また、こうした準備こそが実は滑らかでスムーズで楽しい走りにつながるのです。乱暴に走ることがスポーティな走りだと勘違いせず、滑らかに走れてこそ真の安全とライディングのダイナミズムが味わえるのです。

余裕のある速度を分析する1つの目安

余裕のある速度を分析する1つの目安

目線が先へ向いているかをチェックします。目線が先へ向いていない時は、極度の緊張状態を意味します。

季節・曜日・天候・時間を読む

季節・曜日・天候・時間を読む

台風一過では路面に木っ端・濡れ葉で滑りやすいことにも注意を払いましょう。
秋は落ち葉、冬・早春は日陰の凍結、夏は路面の溶けかかったコールタールによる滑りに注意しましょう。

対向車の車線はみだしに注意

対向車の車線はみだしに注意

観光地ではカーブの先にクルマなどが路肩によらずに駐車していることがよくあります。センターラインを割るクルマにも注意しましょう。

事故防止と上達のマストルール

事故防止と上達のマストルール01
事故防止と上達のマストルール02
事故防止と上達のマストルール03
事故防止と上達のマストルール04

事故防止と上達のマストルール、それがC・K・M(センター・キープ・メソッドの略)です。
"自分の車線の真ん中を意地でも維持する"これが過剰なスピードを抑制するキモになる上に、これを守るためのシビアなスロットル・ステア・ブレーキ操作などが要求され、これによって効果的に上達できるようになるのです。成り行きや根性で走るのは誰でもできるし、しかも無意識のうちに危険な状態にどんどん自分を追い込んでしまうのです。

右カーブでセンターラインに寄っている時や、左カーブで左端に早めに寄っている時、あるいはカーブ出口でセンターラインやガードレールに接近している時は飛ばし過ぎと判断します。たとえば仲間の走行ペースに遅れるとカッコ悪いと思ったり、迷惑をかけると思って無理して飛ばしてしまい、心理的に怖くなってカーブ入り口で早めにイン側に寄るのが危険のサインなのです。あるいは怖いと思っていなくてもすでに危険な臨界域に達している状況でもあるのです。自分が安全かどうかを自分で推し量るひとつの合理的なモノサシ、それがこのC・K・Mなのです。
このモノサシはハイペースだけではなく、スロー走行でも実力がチェックできます。たとえば上り勾配のタイトコーナーでゆっくり走ってふらついてC・K・Mができなかったら、それはハンドルに力が入っている、デリケートなスロットル&ブレーキコントロールができていない、などの理由が必ずあるのです。ハイペース走行ほど、実は車輪のジャイロ効果※2で車体が安定してしまい、いい加減な運転操作でもふらつかないために、ちゃんと走っているように自分で錯覚しやすいのです。逆に言えば遅く走るほど一切ごまかせないのがバイクという乗り物の特性なのです。たとえばかなりのゆっくり速度で腰をイン側に入れて、バンクをあまりさせないで自分の車線中央をふらつかずにトレースするなどは簡単そうで意外にできなかったりするものです。

さて、3番目の40km/hという道路標示では、4と0の数字の間がちょうど自分の車線の中央となります。
4番目の写真では滑り止め&ガイドラインとなっている山切りカット状の路面処理の頂点部分がちょうど車線の中央となります。この中央を維持しながらライディング中の呼吸や脱力など緊張をなくすチェックをし、視線や上体の前傾角度、あるいはリーンウィズ※3などきちんと狙いどおりのフォームができているのかをチェックします。

アウト・イン・アウト※1などハイペースでカーブが走れてしまう走行ラインは、結局「速く走れてしまう」だけで決して安全とは言いきれないし、自分が上手くなったと錯覚しやすいだけ。そして「慣れ」による走行、無秩序・無思考・つまり成長しない走りになりやすいのです。飛ばさなくてもC・K・Mなら着実にレベルアップができるし、飛ばさなくても制御すべきポイントが冷静に分析でき、だからこそ楽しさがじっくり味わえ、脳も活性化し、走る距離に比例してライディングが進化するのです。ともあれ、対向車のセンターラインはみだしに対しても、このC・K・Mならリスクが少ないこともオススメのポイントなのです。

柏木さん

柏流語句の解説

※1 アウト・イン・アウト

カーブの入り口で自分の車線の外側(アウト)から入り、カーブの頂点で内側をトレースし、カーブ出口で再び外側を選ぶ走行ラインを指します。

※2 ジャイロ効果

高回転になるほど車輪の遠心力が強くなり、安定した姿勢を保とうとする現象を指します。ただし、ジャイロ効果による車体の安定と安全適切な走行ラインとは別々に考えるべきです。

※3 リーンウィズ

カーブでの車体傾斜と連動して乗車姿勢も同じ角度の傾斜をするもっとも基本的なライディングフォームを指します。車体傾斜以上に上体を内側に傾斜させることをリーンイン。車体傾斜よりも上体が起きているフォームがリーンアウト。

センターラインのない狭い道ではL1(レフトラインから1mを維持)

センターラインのない狭い道ではL1(レフトラインから1mを維持)

ワインディングでも気をつけたいのはセンターラインのない狭い道。「左端の白線から1mを目安に走る」これを維持することで安全確保とシビアな練習ができます。C・K・MとL1走行こそ真のライフライン&上達のためのモノサシになるのです。

ワインディング、きほんの「き」、まとめ

ワインディング走行は確かに楽しいものですが、1歩間違えると悲惨なことになりやすい場所でもあります。ひたすら怖いだけのライダーも、相当なペースで走ってしまうライダーも、どうか事故だけは起こさないように、そして対向車などのミスに巻き込まれにくいように、自分の車線中央維持C・K・Mにこだわってください。

伊豆スカイラインなど有名なワインディングロードなどでは、無理なハイペース走行による事故が頻繁に起きています。追い越し禁止場所でも平気で追い越しをかけたり、センターラインを割ってまでカーブを攻めて、悲惨な事故になっているケースが後を絶ちません。このままでは、伊豆スカイラインがバイク通行禁止になる可能性があるのです。そうすると全国のさまざまなワインディングで通行禁止の連鎖が起きる可能性があるのです。通行禁止になったら再び通行可能になることはほぼ期待できないのです。そして、これからバイクを始める人たちの楽しみを奪う権利は誰にもないはずです。自分のため、そしてバイクを愛する人のために、くれぐれも事故を起こさない余裕のあるライディングを楽しみたいものです。

いつまでも安全に楽しく走り続けてこそ、素敵なバイクライフなのですから。

第5回「ワインディング、きほんの「き」」にいただいた
ご質問・ご相談への柏さんのアドバイス

S・T様からの質問

バイクでのワインディング走行こそ、風や匂いなど季節を感じることが出来る絶好の場所と思います。
安全で上手な楽しみ方はありますか。
柏さんが必ずすること、お勧め、などアドバイスください。

柏木さん

ワインディングは春夏秋冬、本当に楽しいですね。季節だけではなく時間も大きく関係します。
夏なら夜明け前ぐらいに走り始めると、気持ちよい風がトコトン味わえます。私は夏こそ「朝イチバン」にこだわっています。
もちろん、秋には秋の、春には春の、冬には冬らしい走り方がありますが、いずれもギリギリのハイスピードではなく、速度を控えめにした余裕の走り方こそが安全で美しい走り方になるのだと思います。
どんなベテランの走りでも思い切りチカラの入った姿は意外に美しくないものです。リラックスした走り方は、きっと周囲の人にも伝わるのでしょうね。

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I・M様からの質問

CKM、実はものすごい難しい走り方と思います。出来るようになるまでには、課題をクリアしていくような、ステップが必要に思いますが、どのようにしたらいいですか。

柏木さん

CKMとは私が推奨するセンター・キープ・メソッドの走行ラインです。
自分の車線の真ん中を維持することは意外に難しいものです。まして、ペースが上がると右カーブではついついカーブ手前でイン側のセンターラインに寄りすぎてしまったり、左カーブならカーブ出口でセンターラインへ接近したり、あるいはセンターラインを越えそうになったり。
それでは命がいくつあっても足りませんよね。
自分の車線の真ん中を維持することは、ライフラインを自分で維持することと思って下さい。そのためにはゆっくりとカーブに入り、ゆっくりでもふらつかない自分をじっくり作り上げることです。
センターラインのない狭い道では左端の白い線を目安に1mを維持します。レフトラインの1mでL1走法とします。これもスピードが出すぎないように自己抑制しつつ高度な練習ができる合理的な方法です。
アウト・イン・アウトなどレースまがいの走り方は結果的に速いだけで上手い走りにつながらないだけではなく、リスクがドンドン大きくなるだけです。
CKMとL1走行は高効率な練習になりつつ、安全を大きく確保できる究極の練習手段と思います。

O・T様からの質問

峠走行のような時でないと、バイクを倒して走れる機会がなく、どこまで倒して走れるか、リーンイン・ウィズ・アウトの走り方の練習にもなると思います。
出来ると上手く乗れている気になりますし、バイクって楽しい、と感じることが出来ると思います。

柏木さん

カーブでバンクすることが楽しい。それはそれで悪いことではありませんが、深いバンク状態が優れている訳でもないし、タイヤの端をたくさん使ったほうが優れている訳でもありません。むしろその逆もあると考えます。
バンクが浅い走りでスムーズ。タイヤの端もあまり使っていないのにスイスイ走れる。バンクしている時間を減らす走りが先。そうしたレベルアップのアプローチこそ常に考えるべきことです。
スピードを先に求めるのではなく、走りのエッセンスを知ること。そのために上手くなっていく。その結果に適切なスピードがついてくるという考えをお奨めします。

G・M様からの質問

リーンウィズ、リーンイン、リーンアウト、どのフォームで走ることが理想なのですか。
理想の順番はありますか。

柏木さん

リーンウィズ、リーンイン、リーンアウトなど、それぞれのフォームは、どれが優れているかどうかではなく、どれでもいいのです。
大切なことはどんなフォームも自由自在に正確にできること。その余裕が安全と楽しさをより深くするのです。
ただし、大半はちゃんとしたリーンウィズになっていないし、大半がリーンインのつもりでリーンインになっていません。
練習の順番としては、リーンウィズができていませんから、まずは基本のリーンウィズ。次にリーンインです。バイクのバンク速度=ロール速度を抑えつつ必要に応じてバンク角を自在に操るための基本となる。
その次にリーンアウト。これも大半のライダーは十分には出来ないものです。速度が低めのところでコンパクトに曲がる時に使いますが、これも正確にできなければダメと言う訳ではありませんが、だからこそ自分を客観視するために時にはプロのチェックが必要なのです。誰が見てもリーンウィズ、リーンイン、リーンアウト、の3つがわかる乗り方を目指して下さい。

C様からの質問

コーナーリングの時、ステップにどのように足を置けばいいのかいつも迷ってしまいます。 というのも、左カーブの時はギアも固定なので拇指球(ぼしきゅう:足の裏、親指の付け根のふくらんだ部分)をステップに乗せたらいいのですが、右カーブの際は路上という、いつ止まらないといけなくなるかわからない場所なので、ブレーキペダルとの兼ね合いもあり土踏まずで加重しなくてはならず上手く曲がれません。 何かコツなどありましたらお教えください。

柏木さん

ステップに対して親指の付け根とか土踏まずとか、いろいろな考えがあります。結論としてはどれでも正しい。バイクや体格、走る場所などが異なるのに、答えをひとつに限定すること自体が間違いだと思います。
まずは、やりやすいことから始める。そして自信をつける。自信がついたら他の方法にもトライして、これにも自信をつける。いろんな方法を試して、そのバイクや目的に合った乗り方をすれば良い。それだけです。
ただし、公道では何が起こるかわからない。なので、いつでもどこでも瞬時にブレーキペダルが踏めて、チェンジペダルも使えるのが正しいとも言えます。

M・Y様からの質問

ある講習会で、コーナリングを上手くなるために、左手で、アクセルなし、クラッチなし、の片手旋回を練習させられましたが、怖くて全く出来ませんでした。
これって良い練習なのですか。

柏木さん

左手だけの練習もありますが、怖いことはやらないで良いのです。片手の走行練習に至るまでに、まだいろいろなことをクリアすべきことがあると考えられるからです。無理に怖いことをやらせるのは練習方法に合理性がないともいえます。
技と言うものは実のところ、確実に担保できるものがないとやるべきではないのです。
10cmの丸太を超えるのにハラハラしているのに、20cmの丸太に挑戦しても意味がないことと同じです。10cmの丸太を何通りでも余裕でクリアできると、自然に20cmの丸太にトライしたくなるものです。
そのためには、とても地味な練習が続きますが、「10cmの完璧」は「20cmのあやふや」よりも確実に上なのです。
片手で怪しいことを10回やるよりも、両手でもっと滑らかに笑顔で力を入れずに100回練習するべきなのです。その方が結局、怪我をせず上達が早いのです。

H・K様からの質問

上手くコーナリングを走ろうをすると、近くばかり見てしまって、目線が遠くに行かず上手く走れません。
意識しないでも視線が遠くになり先が読めるようになるにはどうしたら良いのですか。

柏木さん

簡単です。カーブに入る前のスピードを落とせば良いのです。先がよく見えないのにスピードを出す意味がありません。
スピードを落とすとふらつくので落とすとかえって怖い、という人はそもそもワインディングを安全に走れる状態ではないのです。
カーブの入り口から、コーナリングの途中でも余裕でカーブの先へ目線を繰り続けられることは余裕の目安になります。目線が下になったり、近くしか見られない人は、まだまだそのペースが速すぎるだけです。速いのが偉いのではなく、安全にちゃんとスポーツとしてライディングに取り組む姿勢こそが素敵なのです。
速い遅いを判断の目安にするのではなく、価値観をシフトして安全安心をベースにバイクライディングのスポーツ性を堪能すべきなのです。
カーブで速度を落とさないのがカッコイイ走りだという勘違いが、成長を妨げるイチバンの障害です。カーブはゆっくりでもちゃんとスポーツできる。これを求めて戴きたいのです。

S・H様からの質問

峠道の走り方は、上りと下りで走り方が違うのではないかと思うのですが、いかがですか。

柏木さん

峠に限らずサーキットでも、上りと下りは走り方が変わります。
登り勾配では、前輪荷重が減ってしまうため、ラフなアクセル操作やバンキング、ブレーキングでは前輪スリップの可能性が高いのです。
逆に下りでは、後輪荷重が減るために、ちょっとしたことでリヤブレーキはロックしやすいし、スーパースポーツ車ではさらに腕に力が入りやすくなります。
下りは早めの減速が鉄則。上りでは前輪荷重が抜けないように、適切な荷重移動を体の移動やブレーキ操作でカバーします。
いずれも無理しないことが上達の近道です。

N・Y様からの質問

市街地でも同じですが、コーナリング走行のポイントは、カーブミラー(道路反射鏡)で安全確認することが大事と思っていますが、いかがですか。

柏木さん

市街地でもワインディングでも、カーブミラーは大切です。
速度ばかり上げていくと、カーブミラーを十分に見る余裕がなくなるのです。この余裕の欠落こそ転倒事故などに直結するのです。カーブミラーをいちいち確認する余裕の中で、メリハリのある加速と減速を繰り返します。
カーブはスローイン。カーブの途中でもミラーを見て、その先の状況を読む訓練をします。速いだけのライダーではなく、クレバーで上達し続けるライダーになっていただきたい。
安全があっての楽しさであるし、進化なのですから。

S・N様からの質問

雨や霧で視界が悪い時のワインディング走行法ってありますか。

柏木さん

基本的に危険な走行環境では、走らないのがイチバンかもしれません。
しかし、それでもやむなく走るのであれば、先がよく見えない霧や土砂降りの雨の中では、前後ブレーキがいつでも使えるように走る。ギヤも1段あるいは2段低めを使う。後続車がいる場合は、早めのポンピングブレーキで追突されないように牽制する。もしもそれでも車間を詰めてくるのであれば、先に行かせて先導してもらうのが賢明な走り方です。
また、ヘッドライトは霧の中へ溶け込みやすいので、ハザードランプの黄色・オレンジ色の点滅で前後方向への牽制をするべき。ハイビームにするとかえって反射して前が見えにくいことがあります。逆にオレンジ色は霧の中でも見えやすいのです。
前車が、ヘッドライトもリヤフォグランプも点灯していないクルマだと、運転意識が低いわけですから、離れて走るのが賢明です。
バイク仲間同士で走る時も、車間を詰めすぎたり、開けすぎたりせず、一定の間隔を維持して走るのが理想です。

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